呉市視察-議員定数と議会基本条例の検証-
呉市議会を視察 議員定数と議会基本条例の検証について学びました
茅ヶ崎市議会議会運営委員会の行政視察で、広島県呉市議会を訪問しました。
今回の視察テーマは、
「議員定数の見直し」と「議会基本条例の検証」です。
茅ヶ崎市議会でも現在、議員定数について検討を進めています。
議員定数は、「多い」「少ない」だけで判断できるものではありません。
市民の声をどのように議会へ届けるのか。
行政をチェックする機能をどう維持するのか。
一方で、市民の皆さんの税金で運営される議会として、適正な規模はどのくらいなのか。
さまざまな視点から考える必要があります。
だからこそ今回、実際に議員定数の見直しを行った呉市議会が、何を根拠に、どのような議論を行い、どのような過程を経て結論を出したのかを学ばせていただきました。
呉市議会は32人から30人へ
呉市は、明治22年の呉鎮守府開庁を契機に本格的な市街地形成が進み、海軍工廠とともに発展してきたまちです。
戦後は平和産業港湾都市へと転換し、瀬戸内有数の臨海工業地帯として発展してきました。
平成の合併後には人口約25万4千人となりましたが、その後は人口減少が進み、令和7年3月末には20万人を下回ったとの説明がありました。
呉市議会の現在の議員定数は32人です。
しかし、議論を重ねた結果、次の改選となる令和9年5月から2人削減し、30人とすることが決定しています。
今回特に参考になったのは、「人口が減少したから議員も減らす」という単純な考え方だけで結論を出していないことでした。
令和5年6月、議長から議員定数の見直しについて検討するよう提起され、議会運営委員会を中心に具体的な検討が始まりました。
他都市との比較、専門家からの意見聴取、各会派での協議、市民へのパブリックコメントなどを重ね、約1年をかけて結論を出しています。
「適正な議員数」をどう考えるのか
議員定数については、全国共通の「この人口なら議員は何人」という絶対的な答えがあるわけではありません。
人口だけを見るのか。
市域の広さも考えるのか。
財政状況はどうなのか。
地域ごとの特性をどう考えるのか。
市民の多様な意見をどう議会に反映するのか。
行政をチェックするために必要な議会機能をどう確保するのか。
さまざまな論点があります。
特に呉市は市域が広く、地域によって生活環境も異なります。
視察での質疑でも、議員を減らすことによって地域の声が届きにくくなるのではないかという意見が、定数削減に慎重な立場から出されていたことが説明されました。
一方で、人口規模などが近い他都市との比較も必要ではないかという考え方もあります。
呉市議会では、人口や面積、財政力など複数の要素を使った統計的な分析も判断材料の一つとしていました。
異なる意見の専門家から話を聞く
私が特に参考になったのは、参考人として学識経験者を招いていたことです。
しかも、同じ方向性の意見だけを聞いていたわけではありません。
統計的な分析などから定数削減の方向を示す専門家と、多様な市民の意見を議会へ反映するという観点から定数削減に慎重な考えを示す専門家、それぞれから意見を聞いています。
議員定数には、簡単な正解がありません。
だからこそ、自分たちの考えに近い意見だけを聞くのではなく、異なる考え方も含めて判断材料をそろえる。
その上で、最後は議会として判断する。
この進め方は、茅ヶ崎で議論していく上でも参考になると感じました。
市民にも判断材料を示して意見を聞く
呉市議会では、32人から30人へ削減する方向をまとめた後、市民へのパブリックコメントも実施しています。
ここでも興味深かったのは、単に、
「議員を2人減らすことに賛成ですか、反対ですか」
と聞くのではなく、議会がどのような議論をしてきたのか、他都市と比較して呉市がどのような状況なのか、参考人からどのような意見が示されたのかなど、市民が考えるための材料も示していたことです。
市民から寄せられた意見も一つではありません。
削減に賛成する意見がある一方で、議員が減ることで少数意見が反映されにくくなるのではないか、行政に対する監視機能が低下するのではないかという反対意見も寄せられています。
そうした意見を受けた上で再び議論し、最終的に議会運営委員会として32人から30人への変更を答申。
令和6年6月定例会で条例改正案が可決されました。
全会一致ではなかったということも伺いました。
賛否があることを前提として、それぞれの意見を出し合い、判断材料を示し、最後は議会として結論を出す。
私は、結論と同じくらい、そこに至るまでの過程が大切だと感じました。
茅ヶ崎市議会では、なぜ今、定数を検討するのか
茅ヶ崎市議会の条例上の議員定数は28人です。
一方、現任期では、初年度に1人、その後さらに2人の議員が辞職し、現在は26人で議会を運営しています。
私は実際にこの26人体制で議会活動を続けてきた中で、現時点では議会運営に大きな支障は生じていないと感じています。
だからこそ、
「実際に26人で議会運営ができているのであれば、現在の定数28人が適正なのか、一度検討してみてもよいのではないか」
というのが、私の考えです。
ただし、これは、
「26人でできているのだから、26人に減らせばいい」
という意味ではありません。
ましてや、削減ありきで議論すべきだとも考えていません。
現在26人で運営しているという事実を一つの材料として、改めて茅ヶ崎市議会にとって適正な議員定数とは何人なのかを検討してみる。
そこが出発点だと考えています。
「運営できる人数」と「適正な人数」は同じなのか
ここは、しっかり分けて考えなければなりません。
本会議や委員会が開催できているから、それだけで現在の人数が適正だとは言い切れません。
議会の仕事は、会議を予定通り開催することだけではないからです。
市長から提案された議案を審査する。
予算や決算をチェックする。
行政の事業が適切に行われているかを確認する。
地域へ出て、市民の声を聞く。
その声から課題を見つけ、政策につなげる。
必要であれば議会から政策を提案する。
二元代表制の一方を担う議会には、行政とは異なる立場から市政をチェックする大切な役割があります。
その機能を十分に果たせる人数なのかという視点は欠かせません。
また、市民の多様な声を議会へ届けることも重要です。
子育て世代、高齢者、障がいのある方、働く世代、若い世代、地域によって異なる課題など、市民の暮らしはさまざまです。
議員数を考える際には、こうした多様な声をどのように議会へ反映していくのかについても考える必要があります。
定数を考えることは、議員の仕事を考えることでもある
今回の視察では、議員定数とともに「議員の質」についても意見交換がありました。
これも避けて通れないテーマだと思います。
市民の皆さんから見れば、
「議員は普段何をしているのか」
「議会では何を話し合っているのか」
「自分たちの声が、どのように政策や予算につながっているのか」
分かりにくい部分もあると思います。
議員の人数を議論するのであれば、同時に、議員一人ひとりがどのような役割を果たし、議会全体としてどのような成果を出しているのかを見えるようにすることも必要です。
人数だけを減らして終わりでもなく、人数を維持して終わりでもない。
市民から信頼される議会にするために何が必要なのか。
議員定数を考えることは、議会そのもののあり方を考えることにつながります。
議員報酬は別のテーマとして検討
呉市議会では、現在、議員報酬についても検討を進めているとのことでした。
興味深かったのは、今回の定数見直しでは、あえて定数と報酬を同時に議論しなかったことです。
以前、定数だけではなく、報酬、政務活動費、行政視察旅費、費用弁償など複数のテーマを一緒に議論したところ、論点が広がり、定数について結論を出すことができなかった経験があったそうです。
そのため今回は、まず定数について議論し、結論を出した後に報酬などの議論へ進んでいます。
議員報酬についても、「高い」「安い」という話だけではありません。
全国的には議員のなり手不足も課題となっています。
会社員や子育て世代など、多様な立場の人が議員を目指すことのできる環境になっているのか。
議員として活動を継続できる制度になっているのか。
議会の多様性を確保するという意味でも、報酬については定数とはまた別に、丁寧な議論が必要だと思います。
議会基本条例を「作って終わり」にしない
もう一つの視察テーマが、議会基本条例の検証です。
呉市議会では平成22年6月に議会基本条例を制定しています。
特徴的なのは、議員の一般選挙後、速やかに条例の目的が達成されているかを検証することが条例に定められていることです。
つまり、条例を作って終わりではありません。
改選後に、
「条例は実際に機能しているのか」
「議会活動に生かされているのか」
「さらに取り組むべきことはないのか」
を一つひとつ確認しています。
直近の検証では、全31条について、条文ごとに取組状況を確認。
「適切に運用されている」
「さらなる取組が必要」
「検証不要」
などの観点から評価し、条例そのものを改正する必要があるかについても検討しています。
各会派が事前に意見をまとめ、それを持ち寄り、議会運営委員会で一条ずつ協議していました。
意見が一致しない場合には調整を行い、それでもまとまらない場合には多数決によって整理することもあるとのことでした。
条例があることではなく、条例に書かれていることを実際にできているのかを確認する。
とても大切なことだと思います。
検証から次の議会改革へ
呉市議会では、議会基本条例を検証した結果、新たな課題も見えてきました。
例えば、災害や感染症などが発生した場合に議会がどのように対応するのかを定める議会BCP。
そして、オンライン委員会の導入。
さらに、一般質問の活性化や、SNSなどを活用した議会広報の充実についても課題として整理されています。
オンライン委員会については、先進自治体を視察し、模擬オンライン委員会を実施した上で規定を整備したとのことでした。
実際の運用はこれからという部分もあるそうですが、「まずやってみる」という姿勢も印象に残りました。
条例を検証した結果、
「ここができていない」
で終わるのではなく、
「では、どう改善するのか」
と次の議会改革につなげていることが重要だと思います。
結論ではなく、そこに至る過程を大切に
今回の呉市議会への視察を通して、改めて感じたことがあります。
議員定数に、誰もが納得する一つの正解を見つけることは簡単ではありません。
減らすことによるメリットもあれば、懸念されることもあります。
現状を維持するのであれば、なぜその人数が必要なのかを説明する必要があります。
だからこそ私は、最初から結論を決めるのではなく、
なぜ検討するのか。
何を判断材料にするのか。
賛成・反対には、それぞれどのような理由があるのか。
市民の皆さんはどう考えているのか。
そして、なぜその結論に至ったのか。
この過程を大切にしたいと思います。
茅ヶ崎市議会では現在、条例上の定数28人に対し、26人で議会を運営しています。
私自身は、これまで26人で活動してきて、大きな支障は生じていないと感じています。
だからこそ、28人という現在の定数について、一度検証してみることには意味があると考えています。
しかし、「26人でできているから26人にする」という結論ありきではありません。
議会のチェック機能は維持できるのか。
市民の多様な声を拾うことができるのか。
委員会活動はどうなるのか。
議員一人ひとりに求められる役割はどう変わるのか。
他市と比較した場合、茅ヶ崎はどうなのか。
客観的な資料や専門的な知見、市民の皆さんの意見など、判断材料をそろえた上で議論していくことが必要だと思います。
そして、議員定数の議論を、単なる「人数の話」で終わらせてはいけないと思っています。
これからの茅ヶ崎市議会は、どのような議会であるべきなのか。
市民の声を受け止め、行政をチェックし、必要な政策につなげ、その結果を市民へ返していく。
その役割を果たすために、どのような議会の形が必要なのか。
今回、呉市議会から学んだのは「32人から30人に減らした」という結論だけではありません。
異なる意見を持つ専門家から話を聞き、市民にも判断材料を示して意見を求め、議会の中でも議論を重ねた上で結論を出した、そのプロセスそのものです。
呉市と茅ヶ崎市では、人口も面積も地域特性も異なります。
同じ結論になる必要はありません。
大切なのは、茅ヶ崎市議会として必要な議会機能を考え、その根拠を市民の皆さんに説明できることだと思います。
今回の視察で学んだことを持ち帰り、今後の議会運営委員会での議論にしっかりと生かしていきます。
最後になりましたが、お忙しい中、視察を受け入れていただき、議員定数を見直すまでの経緯や議会基本条例の検証、実際の議論の中で難しかったことまで率直にお話しいただいた呉市議会の皆様、議会事務局の皆様に感謝申し上げます。
メッセージ受付中!
茅ヶ崎のまちのこと、市議会のこと、みなさんの暮らしの中でのお気づきのことなど、
何かありましたらお気軽にお問い合わせください。
内容をしっかりと拝見し、お返事させていただきます。
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