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志布志市視察-使用済み紙おむつリサイクル-

鹿児島県志布志市「混ぜればごみ、分ければ資源」― 焼却に頼らず、徹底した分別から生まれた紙おむつリサイクル

令和8年3月26日、鹿児島県志布志市を訪れ、使用済み紙おむつの再資源化をはじめとする、ごみ減量・資源循環の取り組みについて視察しました。

今回、私たちが最も関心を持っていたのは「使用済みの紙おむつを、どうやってリサイクルしているのか」ということでした。

紙おむつは、子育て世帯だけでなく、高齢化が進むこれからの社会においても使用量の増加が見込まれます。一般的には焼却されることが多いものですが、志布志市では、使用済み紙おむつを回収し、再び紙おむつなどの原料として生まれ変わらせる取り組みを進めています。

しかし、視察でお話を伺って分かったのは、紙おむつリサイクルだけを切り取って考えてはいけないということでした。

その背景には、30年近く続けてきた徹底したごみ分別と、市民への説明、市民の協力、そして行政の一貫した姿勢がありました。

■焼却炉を持たないという志布志市の選択

志布志市のごみ行政を理解するうえで、まず大きな特徴があります。

志布志市には、ごみ焼却施設がありません。

現在の志布志市の一部と大崎町では、かつてから焼却炉を持たず、一般廃棄物を最終処分場へ埋め立てる方法をとっていました。

平成2年に一般廃棄物最終処分場が整備された当時は、まだ現在のような細かな分別は行われておらず、生ごみなども一緒に埋め立てられていました。

そのままのペースでごみを埋め立て続ければ、平成16年頃には処分場がいっぱいになってしまうと見込まれていたそうです。

新しい最終処分場をつくるのか。
それとも焼却炉をつくるのか。

そこで志布志市が選んだのが、「徹底的に分別して、埋め立てるごみそのものを減らす」という道でした。

私は、この発想そのものが今回の視察で大きな学びになりました。

茅ヶ崎市では、ごみを焼却し、その後に残る焼却灰を最終処分するという流れが基本です。

一方、志布志市は「焼却すること」を前提にせず、「資源として使えるものを徹底して取り出し、本当に資源化できないものだけを埋める」という考え方です。

同じ「最終処分場を長く使う」という目的でも、入り口から考え方が違います。

■「混ぜればごみ、分ければ資源」

志布志市のごみ行政を象徴する言葉があります。

「美しい地球を子どもたちに」
「限りある資源を大切に」
「混ぜればごみ、分ければ資源」

この考え方を基本として、ごみ分別を進めてきました。

平成11年、旧志布志町では13品目の分別を開始しました。

その後、平成16年からは生ごみの資源化を開始。

現在では、生ごみだけでなく、草木や廃食油、紙類、ペットボトル、缶、瓶、布類など、非常に細かく分別しています。

現在の資源ごみの分別は26種類に及びます。

生ごみは堆肥へ。
廃食油は燃料へ。
木材などはRPF(固形燃料)の原料へ。
ペットボトルや紙、金属などもそれぞれ再資源化されます。

その結果、分別開始前と比べ、埋め立てるごみの量を大幅に削減することができました。

説明では、平成17年以降、資源化率はおおむね74~75%程度となり、環境省の統計で全国の市の中でも長年トップクラスの資源化率を続けているとのことでした。

そして、本来であれば平成16年頃にはいっぱいになると考えられていた最終処分場も、現在のペースであればあと40年以上使用できるのではないかと見込まれているそうです。

ごみを減らすことが、最終処分場そのものの寿命を大きく延ばしました。

■ここまで市民に分別してもらえる理由

26種類もの分別。

聞いただけでも、「市民に理解してもらうのは大変だったのではないか」と思います。

実際、視察でもこの点について質問しました。

非常に印象的だったのが、分別を始める際の行政の対応です。

平成11年に分別を開始するとき、まず環境担当職員だけが説明するのではなく、市職員全体に分別方法や導入の理由を説明し、職員が地域へ出て住民説明を行ったそうです。

さらに、分別開始後も半年ほど、資源ごみの日には職員が地域のごみステーションへ出向き、実際の分け方を市民と一緒に確認しました。

生ごみの分別を始めた際にも説明を重ねました。

新しい制度を決めて、「今日からこうしてください」と市民にお願いするだけではありません。

なぜ分別するのか。
なぜ今までのやり方ではいけないのか。
分別することで何が変わるのか。

そこから説明しています。

そして、一度説明して終わるのではなく、現場で繰り返し伝えてきた。

市民の協力を求める前に、行政が足を運ぶ。

この積み重ねが、現在の志布志市の分別文化につながっているのだと思います。

■そして、紙おむつの再資源化へ

徹底した分別によって埋め立てごみを減らしていく中で、それでも残るものがありました。

その一つが使用済み紙おむつです。

埋め立てごみの中に紙おむつが一定量含まれていることが分かり、「ここも資源化できないか」という発想から取り組みが始まりました。

志布志市では平成19年頃から紙おむつの再資源化を検討していましたが、当時は技術的にもコスト面でも難しく、一度は進まなかった時期もあったそうです。

その後、平成28年度頃からユニ・チャームとの連携が始まります。

ユニ・チャーム側も、使用済み紙おむつを再資源化する技術開発を進める中で、実証実験に協力してもらえる自治体を探していました。

しかし、紙おむつだけを家庭から分けて回収することは難しいと、協力自治体がなかなか見つからなかったそうです。

そこで、すでに細かな分別が市民生活に定着していた志布志市とつながりました。

「志布志なら紙おむつだけを分けて回収できる」

長年積み上げてきた分別の文化が、ここで新しい技術と結びつきました。

志布志市、大崎町、中間処理を行う事業者、ユニ・チャームが連携しながら実証を重ね、令和6年4月から志布志市全域で紙おむつ回収が始まりました。

■使用済み紙おむつが、再び紙おむつへ

回収された紙おむつは、処理施設で洗浄、分解、殺菌、分離されます。

紙おむつを構成している主な素材は、

・パルプ
・プラスチック
・高分子吸収材(SAP)

です。

処理工程でこれらを分け、パルプにはオゾン処理などを行い、再生パルプとして利用します。

この再生パルプから、再び紙おむつをつくる。

いわゆる「水平リサイクル」です。

紙おむつを別の製品にするだけではなく、紙おむつから再び紙おむつへ戻す。

さらに、取り出したプラスチックについても、物流用パレットや紙おむつ回収ボックスなどへの活用が進められています。

再生パルプは紙おむつだけでなく、トイレットペーパーや名刺、紙粘土などにも利用されています。

特に印象に残ったのが、再生パルプを使った紙粘土です。

学校などで環境学習に活用することで、

「自分たちが使ったものが、ごみとして終わるのではなく、もう一度資源になる」

ことを子どもたちが実際に体験できます。

これは、とても分かりやすい環境教育だと思いました。

■令和6年度は168.3トンを回収

令和6年度には、志布志市内の家庭から168.3トンの使用済み紙おむつが回収されたとのことです。

一方で課題もあります。

紙おむつ専用袋の中に、金属や生ごみ、紙おむつ以外のものが入ってしまう「異物混入」です。

処理施設では金属探知機などで異物が確認されると、その袋は処理工程に入れられず、袋ごと埋め立てに回すことになります。

令和6年度には約1.2トンが異物混入によって処理できなかったそうです。

しかし、その後、入れてはいけないものを分かりやすく表示するなど周知を続けた結果、異物は大きく減少しているとのことでした。

ここでも、設備を導入すれば終わりではなく、市民への継続した説明が必要だということが分かります。

■大人用紙おむつの回収という課題

もう一つ興味深かったのが、大人用紙おむつの回収です。

子ども用は比較的分別されやすい一方で、大人用紙おむつについては、「人に見られたくない」「紙おむつを使っていることを知られたくない」といった心理的な抵抗があると考えられています。

そこで志布志市では、紙おむつ専用の回収ボックスを設置しています。

袋が外から見えにくく、家庭に長期間置かずに出せるよう工夫しています。

高齢化が進む中で、大人用紙おむつは今後さらに増えていくと考えられます。

単に「分別してください」と求めるのではなく、出す人の気持ちやプライバシーまで考えて制度をつくることも重要だと感じました。

■次は介護施設など事業系紙おむつへ

現在、回収しているのは主に家庭から出る紙おむつです。

一方、病院、介護施設、保育園などからも大量の紙おむつが出ます。

現在は廃棄物の扱いや既存の処理事業者との関係などもあり、本格的な事業系紙おむつの回収には至っていませんが、保育園でモデル的な回収も行われています。

今後は介護事業所などへの展開も検討しているとのことでした。

介護施設などでは、もともと紙おむつをまとめて管理しているため、家庭よりも異物混入を防ぎやすい可能性もあります。

高齢化によって使用済み紙おむつが増えることを「ごみが増える問題」と見るのか、それとも「新しい資源が増える」と見るのか。

発想を変えることで、全く違う政策になります。

■志布志市から学んだのは「紙おむつ」だけではない

今回、紙おむつリサイクルを目的に志布志市を訪れました。

しかし、視察を終えて最も心に残ったのは、紙おむつの処理技術そのものだけではありませんでした。

課題があったときに、今までのやり方を前提にしないこと。

「焼却炉がないから困った」ではなく、
「焼却炉がないなら、どうすれば埋め立てるごみを減らせるのか」と考える。

「紙おむつはごみだから処分する」ではなく、
「紙おむつの中に使える資源はないのか」と考える。

そして、新しい制度を始めるときには、市民に一方的に協力を求めるのではなく、行政自身が地域へ入り、何度も説明する。

志布志市の取り組みは、そうした積み重ねの結果でした。

■茅ヶ崎で考えたいこと

茅ヶ崎市と志布志市では、ごみ処理の仕組みそのものが違います。

そのため、志布志市の方式をそのまま茅ヶ崎へ持ってくることはできません。

しかし、学べる考え方はたくさんあります。

茅ヶ崎市でも、ごみ減量、資源化、焼却灰の処理、最終処分などは、これからも避けて通れない課題です。

「どう燃やすか」だけではなく、そもそも燃やす前に、どこまで資源として取り出せるのか。

そして、ごみ処理の最後だけを見るのではなく、

「買う」
「使う」
「分ける」
「集める」
「再び資源として使う」

という循環全体を考える必要があります。

もう一つ、志布志市から学びたいのは、市民への説明です。

ごみは、すべての市民の毎日の暮らしに直結しています。

制度を変更すれば、市民生活に負担も生じます。

だからこそ、「決まったから協力してください」ではなく、なぜ必要なのか、どんな効果があるのか、そして市民が協力した結果がどうなったのかまで丁寧に伝える。

行政への理解や信頼は、こうした積み重ねによって生まれるのだと思います。

志布志市が掲げてきた、

「美しい地球を子どもたちに」
「限りある資源を大切に」
「混ぜればごみ、分ければ資源」

という言葉。

単なるスローガンではなく、長年の政策と市民の行動として形になっていました。

紙おむつから始まった今回の視察でしたが、最後には「ごみとは何なのか」「行政が市民と一緒に政策を進めるとはどういうことなのか」まで考えさせられる視察となりました。

すぐに同じことを茅ヶ崎で実施できるというものではありません。

それでも、今ある仕組みを当たり前と思わず、資源化できる可能性を一つずつ探していくこと。

そして、市民と目的を共有しながら進めること。

今回学んだ志布志市の取り組みを、これからの茅ヶ崎市のごみ減量、資源循環、環境政策を考える中でも活かしていきたいと思います。

視察を受け入れ、長年の経緯から現在の課題、今後の展望まで丁寧にご説明いただいた志布志市の皆さまに、心より感謝申し上げます。

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