唐津視察-ゼロカーボンシティ-
唐津市の「ゼロカーボン」と「ネイチャーポジティブ」を視察しました。
海、山、川、緑。私たちの暮らしの身近なところには、たくさんの自然があります。普段は当たり前にあるものだからこそ、その価値を改めて考える機会は、それほど多くないかもしれません。
でも、その自然を「守る」だけではなく、今よりもっと豊かにして次の世代へつないでいく。そして、自然を守る取り組みを地域の力や経済にもつなげていく。
8月6日、会派の行政視察で佐賀県唐津市を訪れ、「ゼロカーボンシティ」と「ネイチャーポジティブ」の取り組みについて学ばせていただきました。
今回のお話で特に印象に残ったのは、唐津市の取り組みのベースに、「市内にある自然をもう一度見直し、さらに豊かにしていこう」という考え方があることでした。
ゼロカーボンというと、太陽光発電や電気自動車、省エネ設備などを思い浮かべます。もちろん、それも大切です。しかし唐津市では、単にCO2を減らすだけではなく、海や森林を守り、地域にある自然の価値を改めて見つけ、それを市民、企業、大学、金融機関など様々な人たちと一緒に地域の力につなげようとしていました。
今回の視察を通して、私は「茅ヶ崎にも、もっともっと活用できるものがたくさんある」と感じました。
唐津市の取り組みから、茅ヶ崎のゼロカーボンと自然環境、そして行政と市民、企業との関わり方について考えます。
唐津市が目指す「自然を豊かにする」という考え方
唐津市には、日本三大松原の一つ「虹の松原」をはじめ、海、山、川など豊かな自然があります。呼子のイカをはじめとする海産物、佐賀牛、ハウスみかんなど、地域の産業や暮らしも自然と深く結びついています。
唐津市では令和5年3月に「ゼロカーボンシティ宣言」を行い、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指しています。さらに令和7年3月には「ネイチャーポジティブ宣言」を行いました。
ネイチャーポジティブは、自然を守るだけではなく、失われてきた自然を回復させ、より豊かな状態にしていこうという考え方です。
唐津市では、ゼロカーボンと自然環境の保全を別々に考えるのではなく、「豊かな自然資本を生かした、地域内循環を目指して」という考え方で取り組みを進めています。
海を豊かにする。森林を守る。地域にある自然の価値をもう一度見つめ直す。そして、自然を守る活動を地域の産業や経済にもつなげていく。
「CO2をどれだけ減らすか」だけではなく、「自分たちの地域にある自然を、これからどうしていくのか」というところから考えていることが、とても印象に残りました。
宣言した後、どう動くのか
ゼロカーボンシティを宣言する自治体は増えています。しかし、大切なのは「宣言しました」で終わらず、その後、実際に何をするのかです。
唐津市では、宣言後の取り組みを「庁内横断的な体制づくり」「市民や事業者への直接的な経済支援」「官民連携による地域内経済循環」の大きく三つに整理しています。
令和6年2月には「唐津市ゼロカーボンシティ庁内推進会議」を設置し、環境担当部署だけの仕事にせず、庁内横断で取り組む体制をつくっています。さらに、より実効性を高めるため、LEDや太陽光など具体的なテーマごとに話し合う形へと見直しています。
例えば公共施設のLED化では、市が管理する多くの施設について蛍光灯の本数を一斉に調査し、どのような方法で切り替えていくのかを検討しています。
公用車への電気自動車導入についても、予算の課題があるため、いきなり電気自動車を増やすのではなく、まず各部署が所有している公用車を集約して管理できないかというところから検討しています。
すべてがすでに実現しているわけではありません。課題もあり、検討途中のものもあります。それでも、宣言を具体的な取り組みに落とし込み、一つずつ動かしていこうとしていることが伝わってきました。
限られた予算だからこそ、工夫する
環境問題に関心があっても、実際に行動するとなると費用が大きなハードルになります。
唐津市では「カーボンニュートラルチャレンジ唐津補助金」を設け、電気自動車、V2H、太陽光発電など、市民の取り組みを支援しています。
興味深かったのは、補助制度を一度つくって終わりではなく、補助単価を見直し、より多くの方が利用できるようにしていることです。
さらに、佐賀県が国の制度を活用して太陽光発電や蓄電池への補助を始めたことで、市がそれまで使っていた財源に余裕が生まれると、その財源を住宅の断熱を支援する「断熱プラス」という新しい補助に振り向けています。
「県が始めたから、市はやめる」ではなく、県が担ってくれるのであれば、市は次に何ができるのかを考える。
限られた財源だからこそ、どこに使えば、より多くの市民の行動につながるのかを考える。この考え方は、環境政策だけではなく、行政全体に通じるものだと思いました。
企業との連携で、市内61か所に無償設置
今回、特に「茅ヶ崎でも参考にしたい」と感じたのが、企業との連携です。
唐津市では企業とタイアップし、公共施設や小中学校、放課後児童クラブなど、市内61か所に浄水器を設置しています。しかも、市の費用負担ではなく無償で実現しているとのことでした。
マイボトルを利用することで、ペットボトルなど使い捨てプラスチックの削減につながります。学校など子どもたちの身近な場所に設置することで、環境について考えるきっかけにもなります。
行政が新しい設備を導入しようとすると、まず「いくらかかるのか」という話になります。もちろん、市が責任を持って予算を確保しなければならないものはあります。
一方で、すべてを市の予算で行う必要があるのか、という視点も必要です。
「予算がないからできない」で終わらせず、「同じ目的を持って、一緒に取り組める企業はないだろうか」と考える。行政と企業がお互いの長所を活かすことで、市民にとってもメリットのある取り組みを実現する。
61か所という規模で、それを無償で実現していることは、とても参考になりました。
行政だけでは届かないところを、民間と一緒に
行政と民間の役割についてのお話も印象に残りました。
行政だけでは、どうしても手が行き届かないところがあります。唐津市では、そうしたところで民間の方々が活動し、行政はその活動を広報したり、必要な人や企業、制度につないだりすることでフォローしているというお話を伺いました。
これは、行政がやるべきことまで民間に任せるということではありません。
行政が担うべきことは行政が担う。その上で、民間だからできること、市民だからできることを活かす。
地域には、すでに様々な活動をしている市民や団体、企業があります。行政がその活動を知り、必要としている人につなぐ。広く知ってもらうために広報する。別の企業や団体につなぐ。使える制度があれば紹介する。
行政自身が新しい事業を一から立ち上げなくても、行政が「つなぐ」ことで動き出すものがあります。
行政、市民、企業、それぞれの得意なことを活かす。これからの行政には、こうした「つなぐ力」がますます必要になると感じました。
「藻で海をきれいにできないか」という市民の声
今回の視察で、私が特に興味を持ったのが、藻場の再生と「ブルーカーボン」の取り組みです。
実は茅ヶ崎でも以前から、市民の方から「藻を活用して海をきれいにできないだろうか」という声をいただいていました。そのため、唐津市で藻場再生に取り組んでいるというお話を伺い、とても興味を持ちました。
唐津市では、地域の漁業者の方々が2000年頃から、磯焼けした海を元に戻すため、ウニの駆除などを行いながら藻場を再生する活動を続けてきたそうです。
最初からブルーカーボンやJ-Blueクレジットを目的として始めたわけではありません。
「海を何とかしたい」「豊かな海を取り戻したい」。
そんな地域の思いから始まった活動です。
長年の取り組みによって藻場が再生し、そこに海藻などがCO2を吸収する「ブルーカーボン」という新しい価値が加わりました。現在では市内8地域に藻場再生の取り組みが広がり、串地区と湊地区ではJ-Blueクレジットも取得しています。
地域の方々が「海を良くしたい」と続けてきた活動が、環境政策につながり、さらに新しい価値にもつながっていく。
私は、この流れがとても印象に残りました。
市民の声を「できない」で終わらせない
茅ヶ崎で「藻を活用して海をきれいにできないだろうか」という声をいただいた時、私自身、具体的にどのような方法があるのか、すぐに答えを出せたわけではありません。
しかし今回、唐津市へ行ってみると、地域の方々が長い年月をかけて藻場を再生し、その活動を行政や企業などが支え、さらにブルーカーボンという新しい仕組みにまで発展していました。
だからこそ、市民からいただいた声を、その時点で「できる」「できない」と判断するだけではいけないと思います。
他の自治体ではどうしているのか。民間企業の力を借りることはできないか。国や県の制度は使えないか。大学や専門家と一緒に研究できないか。
すぐに答えが出なくても、調べることはできます。人をつなぐこともできます。
私は、市民の声を聞くということは、「聞きました」で終わることではないと思っています。その声の中にある課題や可能性を見つけ、どうしたら実現できるのかを考え、必要であれば予算につなぎ、人につなぎ、実行へつなげていく。
私が大切にしている「市民の声を予算と実行へ。」とは、こういうことです。
自然を守ることを、地域の経済につなげる
唐津市では海だけではなく、森林についてもJ-クレジットの創出を目指しています。森林が吸収するCO2を価値として認証し、そのクレジットを企業などに購入してもらう仕組みです。
さらに、海や森林だけではなく、自然そのものの価値を経済につなげられないかという研究も進めています。そこには金融機関をはじめ、大学や企業なども参加しています。
市役所だけで専門的な仕組みをつくろうとするのではなく、金融の専門家、研究者、企業、地域で実際に活動する方々をつなぐ。ここでも行政が「つなぐ役割」を担っています。
自然を守るためには費用も必要です。行政が予算をつけ続けなければ維持できない仕組みだけではなく、自然を守る活動そのものに新しい価値を生み、その価値をまた地域に循環させることができないか。
まだ研究や検討段階のものもありますが、これからの環境政策を考える上で、とても興味深い取り組みでした。
子どもたちが、地域の海から学ぶ
ゼロカーボンを進めるためには、設備や補助制度だけではなく、市民一人ひとりが環境について考える機会をつくることも大切です。
唐津市では、食品ロスを減らす「手前どり」やフードドライブ、海岸清掃など、暮らしの中で参加できる取り組みも進めています。
また、大学や企業と連携し、小学生がワカメの養殖を通してブルーカーボンについて学ぶ環境教育も行っています。
子どもたちが実際に地域の海に触れ、海藻がCO2を吸収することや、海を守ることが地球環境にもつながっていることを知る。
難しい言葉だけで環境問題を教えるのではなく、自分たちが暮らしている地域の海から学ぶことで、「環境問題」が「自分たちのまちのこと」になっていくのだと思います。
茅ヶ崎にも、もっと活用できるものがある
茅ヶ崎市もゼロカーボンシティの実現を目指し、企業などとの連携協定も結んでいます。取り組み自体がないわけではありません。
ただ私は、協定を結んだその後に、どのような活動が行われ、それがゼロカーボンの実現にどうつながっているのか、市民からは見えにくい部分があると感じています。
協定を結ぶことがゴールではありません。大切なのは、その後です。
今回、唐津市のお話を伺って、私は「茅ヶ崎にも、もっともっと活用できるものがたくさんある」と思いました。
茅ヶ崎にも、企業があります。大学や研究機関とのつながりもあります。海や自然を守る活動をしている市民や団体もいます。そして、すでに結んでいる様々な連携協定もあります。
新しいものを一からつくらなくても、今あるものをもう一度見直し、それぞれをつなぐことで、できることはまだたくさんあるのではないでしょうか。
行政には行政だからできることがあります。企業には技術やノウハウ、設備、ネットワークがあります。大学には専門的な知見があります。金融機関には資金や経済の仕組みに関する専門性があります。そして地域には、長年活動を続けてきた市民や団体の力があります。
それぞれが持っている長所を活かし、同じ目標に向かって協力する。そして、一度の協定や一つの事業で終わらせず、その関係を継続していく。
私は、こうした体制が理想だと考えています。
私が大切だと思うこと
今回の視察を通して感じたのは、「ゼロカーボン」という大きな目標を掲げるだけでは、まちは変わらないということです。
大切なのは、その目標を市民の暮らしや地域の活動にどうつなげるかです。
市民が取り組みやすくなるように支援する。企業の力を借りる。大学や金融機関の専門性を活かす。地域ですでに頑張っている人たちを見つけ、その活動を広げる。そして、行政だけでは届かないところを、民間や地域の力と一緒に支えていく。
何でも行政が新しい事業をつくり、予算をつければよいということではありません。
必要なところには、きちんと予算をつける。国や県の制度が使えるのであれば使う。企業と連携できるのであれば連携する。地域ですでに活動している方がいれば、その活動を支える。
そして行政は、人と人、企業と地域、市民の声と制度をつないでいく。
「できない理由」を探すのではなく、「どうしたらできるのか」を考える。
今回の唐津市の視察で、改めてその大切さを感じました。
まとめ
唐津市と茅ヶ崎市では、自然環境も産業も地域の成り立ちも違います。唐津市の取り組みを、そのまま茅ヶ崎に持ってくればよいというものではありません。
しかし、唐津市で伺った「市内にある自然をもう一度見直し、さらに豊かにしていこう」という考え方は、茅ヶ崎にとっても大切な視点だと思います。
茅ヶ崎にも海があります。海岸があり、緑があり、農地があります。そして、その自然を守るために活動している市民、団体、事業者の皆さんがいます。
身近にあるからこそ当たり前になっているものを、もう一度見つめ直す。
新しいものをつくる前に、今あるものをもっと活かせないか考えてみる。
企業との協定も、結んだ後に何ができるのかを考える。市民の活動も、それぞれで終わらせずにつないでみる。行政だけで難しいことなら、企業や大学、専門家の力を借りてみる。
今回、企業との連携によって市内61か所に浄水器を無償で設置している取り組みや、地域で長く続けられてきた藻場再生の活動をブルーカーボンという新しい価値につなげている取り組みを知り、「茅ヶ崎でも、まだできることがたくさんある」と感じました。
そして何より、以前からいただいていた「藻で海をきれいにできないか」という市民の声と、今回唐津市で学んだことが、私の中でつながりました。
すぐに茅ヶ崎でも実現できるかどうかは、まだ分かりません。茅ヶ崎の海に適した方法なのか、どのような技術が必要なのか、誰と取り組むことができるのか。専門的に調べなければならないことがあります。
でも、だから終わりではありません。
まず調べてみる。専門家の話を聞いてみる。企業や大学につないでみる。市民の声から始まったものを、できるところまで一歩ずつ進めてみる。
市民の声が、声のままで終わらない。
「こんなことができたらいいね」という声を行政が受け止め、調べ、人をつなぎ、制度を探し、必要なところには予算をつけ、実行へつなげていく。
そして、茅ヶ崎にすでにある自然、人、活動、企業、技術、制度を、もっともっと活かしていく。
ゼロカーボンという大きな目標を市役所だけの目標にせず、市民も、企業も、子どもたちも、「自分たちも一緒に取り組んでいる」と感じられるものにしていく。
唐津市の視察を「参考になりました」で終わらせず、「では、茅ヶ崎だったら何ができるだろう」と考える。
一つずつ調べ、つなぎ、提案し、実行につなげていきたいと思います。
唐津市の担当職員の皆様、貴重なお話をありがとうございました。
メッセージ受付中!
茅ヶ崎のまちのこと、市議会のこと、みなさんの暮らしの中でのお気づきのことなど、
何かありましたらお気軽にお問い合わせください。
内容をしっかりと拝見し、お返事させていただきます。
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