研修-予算・決算の仕組みと財政構造について-
予算と決算をどう見るか
地方自治体の財政を学んで考えたこと
8月7日、地方公共団体の予算・決算の仕組みと財政構造について学ぶ研修に参加しました。
自治体の予算や決算というと、数字や専門用語が多く、少し難しく感じるかもしれません。私も議員として毎年、予算と決算を審査していますが、今回改めて体系的に学んだことで、「どの数字を見るのか」だけではなく、「その数字を次の政策にどうつなげるのか」という議会の役割について考える機会になりました。
私が特に印象に残ったのは、予算と決算を別々に考えてはいけないということです。
予算は、その年度に何をするのかを決めるもの。決算は、その予算を使って何を行い、どんな結果が出たのかを見るものです。そして決算で見えてきた課題や成果を、次の予算へ反映させていく。本来、この一連の流れがつながっていなければなりません。
私は「市民の声を予算と実行へ。」ということを大切にしています。そのためにも、決算をしっかり検証し、次の予算につなげることが重要だと改めて感じました。
予算案が出てからでは遅い
自治体の予算は、2月や3月の議会に突然出てくるわけではありません。夏頃から庁内で準備が始まり、予算編成方針が示され、秋から各部署の予算要求や調整が進みます。その後、財政担当部署による査定や市長査定を経て、2月頃に議会へ予算案が提出されます。
つまり、議会に予算案が提出されてから「この事業をやってほしい」と言っても、その時点では予算編成はほぼ終わっています。
今回の講義では、9月から10月頃の決算審査の時期が重要だという話がありました。前年度の事業を検証し、「ここは改善する必要がある」「この事業はもっと充実させるべき」「このやり方は見直した方がいい」と具体的に示し、それを次年度予算につなげる。
決算審査は、終わった年度のお金の使い方を確認するだけではなく、次の予算を考えるスタートでもあるということです。
これは、私が考える「市民の声を予算と実行へ。」にもつながります。
市民の皆さんからいただいた声を聞き、課題として整理する。その課題に現在の事業で対応できているのかを決算で確認する。足りなければ改善を求め、必要であれば次年度の予算につなげる。
声を聞くことと予算審議を別々にするのではなく、一本につなげて考える必要があります。
決算は「いくら使ったか」だけではない
決算審査では、最終的に議会が決算を認定するか、不認定とするかを判断します。しかし、不認定にしたからといって、すでに使われたお金が戻ってくるわけではありません。
だからこそ大切なのは、「認定するかどうか」だけではなく、その事業にどのような効果があったのかを見ることです。
例えば、1,000万円の予算を使った事業があったとします。大切なのは「1,000万円使いました」で終わらせないことです。その結果、何人の市民が利用したのか。どんな課題が解決したのか。市民生活はどう変わったのか。目的は達成できたのか。そこまで見なければ、本当の意味での決算審査にはならないと思います。
また、大きな不用額が出ていれば、なぜ使わなかったのかを見る必要があります。利用者が想定より少なかったのか、事業が予定どおり進まなかったのか、それとも最初の予算見積もりが大きすぎたのか。理由によって、次年度の予算の考え方も変わります。
「昨年もやったから今年もやる」ではなく、「昨年やった結果、どうだったのか」を確認して次を決める。この積み重ねが大切です。
自治体財政は1年だけを見ない
財政を見るときには、単年度の数字だけで判断してはいけないという話もありました。
ある年度に基金が増えたから財政が良くなった、逆に基金が減ったから悪くなった、と単純には判断できません。特殊な事情があった可能性もあります。
そこで活用できるのが、総務省が公表している「決算カード」や「財政状況資料集」です。
歳入、歳出、市税、地方債、基金、財政指標などを確認することができ、複数年度を並べることで、その自治体の財政がどちらへ向かっているのかが見えてきます。
5年、10年という流れで見る。そして、人口規模や産業構造などが似ている自治体とも比較する。
一つの数字だけで「財政が良い」「悪い」と判断するのではなく、その数字がなぜそうなっているのかを見ることが重要です。
茅ヶ崎市の財政調整基金について指摘されたこと
今回の研修では、茅ヶ崎市の財政についても実際の資料を使って見ていただきました。その中で特に気になったのが、財政調整基金です。
財政調整基金は、簡単に言えば自治体の「いざという時のための貯金」です。
災害や感染症、急激な景気悪化、税収減など、予想していなかった事態が起きたとき、市が独自に対応するための重要な財源になります。
今回、茅ヶ崎市については、財政調整基金の水準が標準財政規模に対して10%台程度であり、講師からは「低い。20%程度は必要ではないか」という指摘がありました。
ここで興味深かったのが、コロナ禍を経験したことで、財政調整基金に対する考え方が変わってきたという話です。
以前は標準財政規模の10%程度を一つの目安として考える見方がありました。しかし、新型コロナウイルス感染症という、誰も予想していなかった事態が全国の自治体を襲いました。
国からの支援が決まるまで待つのではなく、市民生活や地域経済を守るため、自治体独自で早く動かなければならない場面がありました。そのときに、すぐ使える財源をどれだけ持っているかが自治体の対応力の差につながりました。
こうした経験から、今回の講義では20%程度を一つの目安として備える必要があるのではないか、という説明がありました。
もちろん、20%という数字が全国一律の絶対的な基準ということではありません。また、基金は多ければ多いほど良いというものでもありません。
市民の皆さんからいただいた税金を積み上げるだけではなく、今必要な市民サービスにはきちんと使う必要があります。
だからこそ、「いざという時のためにどの程度を残すのか」「今の市民生活のためにどの程度を使うのか」というバランスが重要です。
茅ヶ崎市として、どの程度の財政調整基金を確保していくのか。その根拠と今後の見通しについては、私自身もしっかり確認していきたいと思います。
「黒字だから大丈夫」では分からない
もう一つ勉強になったのが、「実質単年度収支」という見方です。
自治体の決算は、単純に歳入から歳出を引いて黒字になっているから安心、というものではありません。
例えば、家庭で貯金を100万円取り崩して生活費に使い、年末に10万円残ったとします。結果だけ見れば「10万円残った」と言えますが、そのために100万円の貯金を使っています。
自治体も同じです。
基金を取り崩して収支を合わせている場合、表面的な数字だけでは財政の実態を判断できません。
基金への積立てや取り崩しなどを考慮し、その年度の実質的な収支を見るのが「実質単年度収支」です。
基金を毎年取り崩しながら黒字を維持しているのであれば、その状態をいつまで続けられるのかを考えなければなりません。
自由に使えるお金がどれだけ残っているか
「経常収支比率」も重要な指標です。
人件費、扶助費、公債費など、毎年継続して必要になる経費に、自由に使える一般財源がどの程度使われているのかを見るものです。
この比率が高くなればなるほど、新しい政策に使える財源の余裕がなくなります。
100%に近づけば、毎年必要な経費だけで自由に使える財源のほとんどを使ってしまうことになります。
新しいことをやりたいと思っても、お金を動かせない。
これが「財政の硬直化」です。
ただし、経常収支比率だけを良くすればよいわけではありません。基金、地方債、実質単年度収支、将来負担など、複数の指標を一緒に見る必要があります。
一つの数字だけを良く見せても、別のところに負担を移しているだけでは意味がありません。
地方債は「借金だから悪い」ではない
地方債についても改めて学びました。
地方債は自治体の長期的な借入金ですが、「借金だから少ない方がいい」と単純に考えるものでもありません。
例えば、学校や道路、公共施設など、何十年も利用するものを整備するとき、現在の市民だけですべての費用を負担するのではなく、将来その施設を使う世代にも負担してもらうという考え方があります。
これは「世代間の公平」という考え方です。
大切なのは、借金があるかないかではなく、何のために借りたのか、返済できる範囲なのか、将来世代に過度な負担を残していないかを見ることです。
人口が変われば公共施設のあり方も考える
今回の講義では、人口減少と公共施設についても取り上げられました。
人口が減少しているのに、公共施設の数や面積を同じように維持し続ければ、一人当たりの維持管理費は大きくなっていきます。
建物は使っていなくても費用がかかります。修繕、安全管理、維持管理、そして最終的には解体費用も必要です。
茅ヶ崎市でも公共施設の老朽化は避けて通れない課題です。
「古くなったから建て替える」だけではなく、本当に同じ規模が必要なのか、複数の機能を一緒にできないか、民間の施設を活用できないかなど、将来の人口と財政を見ながら考える必要があります。
「市民の声を予算と実行へ。」のために
私は「市民の声を予算と実行へ。」と掲げています。
しかし、市民の皆さんから要望をいただいたものを、すべて新しい事業として予算化することが「声を予算にする」という意味ではありません。
まず、その声の背景にどんな課題があるのかを考える。
今ある事業で対応できないのか。少し仕組みを変えればできないのか。行政だけでなく民間や地域と一緒にできないのか。それでも行政として必要なものであれば、優先順位をつけ、必要な予算を確保する。
同時に、効果が出ていない事業は見直す。役割を終えたものは終了する。
限られた財源だからこそ、「何をやるか」と同じくらい「何を見直すか」も重要になります。
その判断材料になるのが決算です。
市民からいただいた声を課題として整理する。決算で現在の事業を検証する。改善策を考える。そして、予算編成が始まる前に具体的な提案をする。
「声を聞く→課題を整理する→決算で検証する→優先順位を決める→予算につなげる→実行する→結果を市民に返す」
私は、この流れをつくっていきたいと考えています。
まとめ
今回の研修を通して、自治体財政は「お金があるか、ないか」だけで見るものではないと改めて感じました。
何に使ったのか。その結果、何が変わったのか。基金はいざという時に十分なのか。地方債は将来に過度な負担を残していないか。公共施設を今後も維持できるのか。そして、市民の皆さんが納めた税金が、本当に必要なところに使われているのか。
特に、茅ヶ崎市の財政調整基金について、コロナ禍を経験した今、これまでとは違った備え方が必要ではないかという指摘を受けたことは、今後さらに確認していきたい点です。
そして9月の決算審査を、単なる「昨年度の答え合わせ」で終わらせないこと。
決算を見て、課題を見つけ、次年度の予算につなげる。予算が執行されたら、その結果をまた確認する。
予算と決算をつなぐ。
市民の声と予算をつなぐ。
そして、予算を実行につなげる。
数字の先にあるのは、市民の皆さんの暮らしです。
今回学んだことをこれからの決算審査や予算審議に活かし、「声を聞きました」で終わるのではなく、「声が予算につながり、実際に暮らしが変わった」と感じていただける市政につなげていきたいと思います。

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