徳島市視察-徳島市立図書館-
駅前の商業施設にある図書館から考える、これからの茅ヶ崎市立図書館
徳島市立図書館を視察しました
2026年7月9日、会派「市民の声ちがさき」の行政視察で、徳島市立図書館を訪問しました。
今回、徳島市立図書館を視察した理由の一つは、茅ヶ崎市立図書館が抱えている老朽化や蔵書スペース、利便性などの課題を考えるためです。
徳島市立図書館は、駅前の商業施設「アミコビル」の中にあります。
実際に訪れて最も印象に残ったのは、単に「商業施設の中に図書館が入っている」ということではありませんでした。
買い物に来た人が図書館へ行く。
図書館に来た親子が子育て支援センターへ行く。
子どもと本を読んだあと、同じフロアにある書店へ立ち寄る。
施設と施設がつながり、人の動線が生まれていました。
そして図書館そのものも、「本を置いて貸し出すための施設」というより、人が集い、本を楽しみ、学び、時間を過ごす場所としてつくられていました。
子どもから学生、高齢者まで、幅広い年代の方が利用されていたことも印象的でした。
昭和27年開館、平成24年に駅前へ移転
徳島市立図書館は昭和27年に設置され、平成20年度から指定管理者制度を導入しています。
現在の指定管理者は図書館流通センターです。
大きな転換点となったのが、平成24年の移転でした。
それまでの図書館から、徳島駅前にあるアミコビルへ移転し、「人と文化が出会う駅前図書館」を基本コンセプトとして新たなスタートを切りました。
移転先として駅前の既存商業施設を活用したことで、利便性の高い立地を確保するとともに、新たに建物を建設する場合と比較して整備費用を抑えることにもつながっています。
移転にかかった事業費は約10億2,700万円。
一般図書は6階、子ども向けの図書館は5階に配置され、1階には24時間利用できる返却ポストが設置されています。
移転によって延床面積は約3倍となり、蔵書能力も約2倍に拡大しました。
現在の蔵書は約58万冊です。
また、開館日数や開館時間も拡大され、ICタグや自動貸出機なども導入されています。
こうした改善によって、移転後は来館者数、貸出数ともに大きく増加し、累計来館者数は655万人を超えたとのことでした。
「駅前に図書館がある」ことの意味
今回、実際に現地を歩いてみて感じたのは、駅前の商業施設に図書館があることの意味です。
図書館だけを目的に出かけるのではなく、買い物や用事のついでに立ち寄ることができます。
反対に、図書館を目的に訪れた人が、商業施設内の店舗を利用することもあります。
図書館が人を呼び、人が施設の中を動く。
こうした動線が生まれていました。
行政施設を考えるとき、どうしても「その施設にはどのような機能が必要なのか」という視点が中心になりがちです。
もちろん機能は重要です。
しかし、これからは「そこに人が来ることで周辺に何が生まれるのか」という視点も必要なのではないでしょうか。
図書館が単独で存在するのではなく、商業、子育て、学びなどとつながることで、施設そのものの役割も広がっていく。
徳島市立図書館を見て、その可能性を感じました。
子どものフロアには子育て支援センターや書店も
特に興味深かったのが、子ども向けのフロアです。
同じフロアには子育て支援センターや書店があり、子どもや保護者の動線が自然につながるようになっています。
子育て支援センターを利用した親子が図書館へ立ち寄る。
図書館で絵本を読んだあとに書店を見る。
その逆もあります。
行政サービス、図書館、民間の店舗を完全に分けて考えるのではなく、同じ空間の中でそれぞれの機能がつながっています。
子ども室には畳のスペースなどもあり、休日には多くの家族連れが利用しているそうです。
また、絵本の読み聞かせは毎日2回行われています。
「今日は読み聞かせがあるから行ってみよう」
そんな小さなきっかけが、子どもが本と出会う機会になります。
子どもに「本を読みましょう」と言うだけではなく、自然に本と出会える環境をつくる。
この考え方は、とても大切だと思います。
図書館は「本のため」ではなく「人のため」
今回の視察で、私が最も印象に残ったのはここです。
図書館は、本のためにある施設ではなく、人が集い、図書を楽しんでもらう場所として位置付けられていました。
もちろん、図書館ですから本を収集し、保存し、貸し出すという役割は重要です。
しかし、それだけではありません。
調べる。
学ぶ。
仕事をする。
親子で過ごす。
一人で静かに過ごす。
人と出会う。
実際に館内を歩いてみると、小さなお子さんを連れた家族、中高生、社会人、高齢者など、幅広い年代の方が利用されていました。
同じ図書館という空間にいながら、それぞれが違う目的で時間を過ごしています。
これから公共施設を考えるうえで、「何を置くか」だけではなく、「そこで市民がどのように過ごせるか」という視点が、より重要になってくるのではないかと思います。
中高生や仕事をする人にも居場所がある
徳島市立図書館では、子どもだけでなく、中高生や社会人の利用にも力を入れています。
中高生向けには、会議室を自習スペースとして開放し、12席を用意しています。
また、社会人向けには調査や仕事に利用できる席が19席あり、オンラインデータベースなども利用できます。
徳島大学との連携や、地域のスポーツチームである徳島ヴォルティスの選手がおすすめする本の展示など、地域とのつながりを意識した取り組みも行われています。
図書館で勉強する学生がいる。
仕事のために資料を調べる人がいる。
子どもと一緒に絵本を読む親がいる。
新聞や本を読みながら過ごす高齢者がいる。
一つの施設の中に、さまざまな世代の居場所があります。
公共施設には、この「特別な用事がなくてもいられる場所」という役割もあるのだと思います。
図書館に来られない人にも本を届ける
徳島市では、図書館に来ることが難しい方へのサービスも行われています。
移動図書館「いずみ号」は、市内81か所のステーションを巡回しています。
約3,000冊を積載し、本の貸し出しだけでなく、予約した本の受け取りにも対応しています。
さらに、市内73か所に数百冊単位で本を届け、一定期間貸し出す配本サービスも行っています。
在宅の方を対象とした送本サービスもあります。
図書館を便利な場所に整備することは大切です。
一方で、「そこまで行くことができない人をどうするのか」という視点も欠かせません。
高齢化が進む中、移動が難しくなる方は増えていきます。
施設を整備することと、施設に来られない人へサービスを届けること。
この両方を考えていく必要があります。
学校との連携も
学校教育との連携も行われています。
学校図書館を直接運営するところまでは行っていませんが、教科書に掲載されている本をまとめて貸し出したり、授業のテーマに合わせた資料をセットにして提供したりしています。
例えば「戦争」をテーマとした調べ学習では、関連する約43点の資料をまとめて学校に提供することもあるそうです。
子どもたちが調べたいときに、必要な本が学校にそろっているとは限りません。
市立図書館が持っている多くの資料を学校教育にも生かすことで、子どもたちの学びの幅を広げることができます。
学校図書館と市立図書館を別々に考えるのではなく、市全体の「学びを支える資源」としてつないでいく視点は、茅ヶ崎でも考えていきたいところです。
指定管理者制度による運営
徳島市立図書館では、平成20年度から指定管理者制度が導入され、現在も図書館流通センターが運営しています。
年間の指定管理料は約2億8,060万円。
施設の賃借料は年間約1億円、IC関連経費は年間約1,880万円との説明がありました。
指定管理者制度については、単純に「民間だから良い」「直営だから良い」と判断するものではありません。
大切なのは、市民サービスがどう変わるのか、専門性をどう確保するのか、そして費用に見合った効果が得られているのかを見ることです。
徳島市では、専門人材の確保や効率的な人員配置、職員研修などに民間のノウハウが活用されていました。
一方で、図書館は公共性の高い施設です。
運営方法だけではなく、自治体としてどのような図書館を目指すのかという方針を明確に持つことが重要だと感じます。
駅前だからこその課題もある
もちろん、駅前の商業施設に移転すればすべてが解決するわけではありません。
徳島市立図書館には専用駐車場がなく、駐車場の整備や料金への要望もあるそうです。
また、アミコビルから百貨店が撤退したことやコロナ禍などの影響もあり、来館者数が減少した時期もありました。
商業施設の中にあるということは、図書館だけで完結せず、施設全体の集客や周辺環境の影響を受けるということでもあります。
逆に考えれば、図書館が多くの人を呼ぶことで、商業施設や駅前の人の流れに影響を与える可能性もあります。
実際、図書館が休館の日には人通りが少なくなるという声もあるとのことでした。
ただ、図書館が地域や商業施設にどれだけの経済的効果を生み出しているのかについては、十分な定量分析までは行われていないとのことでした。
ここは非常に興味深いところです。
これから公共施設を考える際には、利用者数だけではなく、「その施設がまちにどのような人の流れをつくっているのか」という効果も見ていく必要があると思います。
茅ヶ崎の図書館をどう考えるか
茅ヶ崎市立図書館も、老朽化や蔵書スペース、利用しやすさなど、これから考えていかなければならない課題があります。
だからといって、徳島市と同じようにすればよいということではありません。
まちの規模も、駅周辺の状況も、市民の移動手段も違います。
大切なのは、建物をどうするかという議論から始めるのではなく、「これからの茅ヶ崎に、どんな図書館が必要なのか」を考えることだと思います。
本を借りる人だけが利用する図書館なのか。
子どもたちが本と出会う場所なのか。
学生が安心して勉強できる場所なのか。
子育て中の親子が立ち寄れる場所なのか。
高齢者が外出するきっかけになる場所なのか。
仕事や地域活動について調べられる場所なのか。
そして、図書館を訪れる人の流れを、周辺の商業やまちの賑わいにつなげられないか。
図書館を一つの公共施設としてだけ見るのではなく、子育て、教育、高齢者の外出、地域交流、駅周辺のまちづくりなどと一緒に考えることで、可能性は大きく広がります。
私が大切だと思うこと
今回の視察を通して改めて感じたのは、公共施設は「建物をつくること」が目的ではないということです。
その場所で誰が、どのように過ごすのか。
そこへ行くことで、どんな出会いや行動が生まれるのか。
そして、その人の流れが周辺のまちにどうつながっていくのか。
徳島市立図書館では、図書館、子育て支援センター、書店、商業施設、駅という異なる機能が、一つの人の動線の中でつながっていました。
これは、これからの茅ヶ崎の公共施設を考えるうえでも大切な視点だと思います。
図書館は、本のためにある施設ではなく、人のためにある施設。
本を借りなくても、そこに行く理由がある。
子どもも学生も、高齢者も、それぞれの過ごし方ができる。
そして、本をきっかけに新しいことを知ったり、人や地域とつながったりする。
そんな場所になれば、図書館の役割はもっと広がります。
茅ヶ崎市でも、現在ある施設の課題だけを見るのではなく、これから先、市民にとってどのような場所が必要なのかというところから、図書館のあり方を考えていきたいと思います。
まとめ
徳島市立図書館は、駅前の商業施設という立地を生かしながら、「人と文化が出会う駅前図書館」としてさまざまな取り組みを行っていました。
延床面積や蔵書数を増やすだけではなく、子どもの読書支援、中高生の学習スペース、仕事や調査への支援、移動図書館、在宅サービス、学校との連携など、図書館の役割そのものを広げています。
中でも印象的だったのは、子どものフロアに子育て支援センターや書店があり、それぞれの施設を利用する人の動線が自然につながっていたことです。
毎日行われる絵本の読み聞かせも含め、「本を借りに来てもらう」のを待つのではなく、本と出会うきっかけをつくっています。
そして実際に、子ども、学生、社会人、高齢者まで、多くの世代が同じ場所を利用していました。
これから茅ヶ崎市立図書館について考えるとき、蔵書数や建物の大きさだけではなく、
「誰が、何のために訪れる図書館にするのか」
「図書館に来ることで、どんな時間を過ごせるのか」
「図書館を中心に、どのような人の流れをつくるのか」
というところまで考えていく必要があると思います。
本を読むためだけではなく、人が集い、学び、過ごし、地域とつながる場所へ。
徳島市立図書館の取り組みは、これからの茅ヶ崎の図書館、そして公共施設のあり方を考えるうえで、多くのヒントがある視察となりました。
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